大祓詞にみる罪

天津罪

①畔放ち...田の畔を壊して田の水を干し、稲の成長を妨げる事。
②溝埋め...田に水を引く為に設けた溝を埋め、水を通わなくする事。
③樋放ち...田に水を引く為に設けた樋を壊し、田へ水が通わなくする事。
④重播き...ある人が種を蒔いた所へ重ねて別の人が種を蒔き、作物の成長を妨害する事。
⑤串刺し...作物の収穫時に所有権を示す札を他人の田畑に立て、それを自分のものであるとする事。所有権の侵害。
⑥生剥ぎ...生きている馬の皮を剥ぐ事。
⑦逆剥ぎ...馬の皮を尻の方から剥ぐ事。
⑧ 糞戸 ...収穫祭の祭壇へ汚い物を撒き散らす事。



国津罪

① 生 膚 断 ち ...生きている人のはだに傷を付ける事。
② 死 膚 断 ち ...死んだ人のはだに傷を付ける事。
③   白  人   ...はだの色が白くなる病気。例えば白子や白癜等。
④  胡 久 美  ...こぶのできる病気。例えば瘤・疣など。
⑤ 己が母犯せる罪 ...実母との相姦の罪、近親相姦の一種。
⑥ 己が子犯す罪 ...実子との相姦の罪、近親相姦の一種。
⑦母と子の犯せる罪...まずある女と相姦し、後にその女の子と相姦する事。
⑧子と母の犯せる罪...まずある女と相姦し、後にその女の母と相姦する事。
⑨ 蓄 犯 せ る 罪 ...家畜を相手に性欲を満足させる獣姦。
⑩  昆ふ虫の災い  ...地に這う虫から蒙る災い。例えば百足・蛇等の毒に害される事。
⑪  高つ神の災い  ...雷による災難。落雷による火災や死亡者の発生。
⑫  高つ鳥の災い  ...空を飛ぶ鳥による災難。
⑬蓄仆し、蠱物せる罪...家畜類を殺し、その血で悪神を祭り、人々を呪うまじないをする事。



大祓詞にみる罪

八種の天津罪と十三種の国津罪が列挙されています。

天津罪は、農業つまり食糧生産の大切さ、
特に稲作は人の存亡にも関わる重大な事で、それを害する事は許されない事をよく伝えています。
家畜にしても大変大切な財産として強く認識していた事を示しています。
国津罪は、まず他人を傷つけない、死者に対して敬意を払い、病を憎むと解釈できます。
また、近親相姦などモラルに対して厳しく戒めています。
更に人にとっては対策しずらい・出来ない自然災害についても罪としています。

病患や災禍は人々が除去したいと願うもので、本来の罪とは異質です。
これは仏教の影響が出ているのです。
薬師信仰が盛んになるにつれ、薬師仏の力によって病気を治癒し、災禍を除去し、
犯した罪を消滅させて苦悩から救済してもらおうと現世利益の信仰がありました。
これが大祓と関わり合い、その中に病患や災禍の祓除が副次的に入り込むことになったと考えられています。
更に後には、祓えに穢れを祓うという大きな要素が含まれてくる要因となって、
祓えと禊が混同される結果を招いてしまったのです。


神道の種類  神社の年中行事  禊と祓  禊・祓の起源  大祓詞  太祝詞  天津祝詞


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